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うつ病の治療

01 うつ病の治療

うつ病の治療

うつ病は「心の風邪」と表現された事がありますが、その経過は風邪ほど簡単には治るものでありません。高血圧や糖尿病と同じく慢性疾患である事を忘れずに。じっくり治療する覚悟が必要です。
急性期から回復して症状改善しても、維持期は定期的な外来通院は必要です。特に再発をしている患者さんは、しっかり通院して下さい。

「時代が変わったなあ」と思う事があります。
私が医師になった頃は、うつ病は一生くすりを服むものであるという事が治療上の常識であったと記憶しています。
現在は、寛解期(症状が安定している事)がある程度持続していれば、外来を円満に中止する事がトレンドとなりつつあります。
それには条件があり、私は以下の事をうつ病寛解期においての外来中止条件としています。

①年単位で症状が安定している事
 何年安定とするかは、病状経過により決めていきます。
②抗うつ剤が単剤で少量の処方となっている事
③症状悪化につながる外的要因に対してきちんと対処できるセルフコントロールがある事
 例えば、過重労働になりそうであれば、仕事を断るか休みをとる事ができるかです。

このように、寛解から中止した患者さんは、正式な統計はとっていませんが、残念ながら半数位は再発してくる印象です。しかし、このような事を進める事で、うつ病となった患者さんがきちんと治療をうけ、その後外来通院が中止にできて再発しないで社会で活躍できる事は、素敵な事ではありませんか?

うつ病治療4つの柱


うつ病治療には、上記4つの柱がありますが、特に薬物療法は休養とセットでないと有効度は低いです。
うつ病の急性期の患者さん(特に初発の場合)は、自分の頭や身体に何が起こっているのか不安でたまらない状態です。
医師より病名を告げられると、「うつ病って治るのかな?」と不安が増長していきます。うつ病はきちんと治療すれば改善する病気である事を理解しましょう。

筆者は、『こころの病気も身体の病気も同じです。うつ病はきちんと治療すれば改善する病気です。くすりをのんで休む事が大切です。うつ病は暗いトンネルのようなものですが、トンネルの先には光がありますから』と説明するようにしています。

十分な休養をとりましょう。会社に勤務している方は休職する選択をする事も考えるべきです。
筆者は休養の診断書は原則3ヶ月で作成します。それは、うつ病は1ヶ月では改善が見込がめない事が多く、期間の短い診断書は、本人が焦ってしまいます。
幅を持たせた診断書で、じっくり治療する覚悟を決めたほうが症状の改善が見込めます。

症状がある程度改善後は、症状発症また悪化のきっかけとなった環境(例えば職場問題 家族問題 経済問題 等)を調整しないと再発がおこりやすいです。
出来うる限り、元の環境の見直しを周囲と協力して行っていきましょう。

また、前述したようにうつ病の方は、悲観的な思考になりやすい方が多く、その思考を『認知の歪み』と呼びます。つまり、普通の人の物の考え方とずれた考えをしています。
これを認知行動療法という精神療法で修正する治療があります。この治療は臨床心理士が行う事が多いのですが、多くの精神科病院では臨床心理士がいない等の理由で施行できる環境にはありません。