成年後見制度について
成年後見制度とは、認知症・知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方(ここでは「本人」といいます)について、本人の権利を守る援助者(「成年後見人せいねんこうけんにん」等)を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度です。
01 成年後見制度の種類
判断能力が不十分になる前に・・・「任意後見制度」
将来、判断能力が不十分となった場合に備えて、「誰に」「どのような支援をしてもらうか」をあらかじめ契約により決めておく「任意後見制度」が利用できます。
判断能力が不十分になってから・・・「法定後見制度」
家庭裁判所によって、援助者として成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が選ばれる「法定後見制度」が利用できます。
利用するためには、家庭裁判所に審判の申し立てをします。
本人の判断能力に応じて「後見」「補佐」「補助」の3つの制度を利用できます。
02 法定後見制度の3種類
後見 | 補佐 | 補助 | |
対象となる方 | 判断能力が全くない方 | 判断能力が著しく不十分 | 判断能力が不十分な方 |
成年後見人等の 権限 | ●財産管理についての全般的な代理権、取消権(日常生活に関する行為を除く) | ●特定の事項(※1)についての同意見(※2)、取消権(日常生活に関する行為を除く) | |
●特定の事項(※1)以外の事項についての同意見(※2)、取消権(日常生活に関する行為を除く) ●特定の法律行為(※3)についての代理権 | ●特定事項(※1)の一部に ついての同意見(※2)、取消権(日常生活に関する行為を除く) ●特定の法律行為(※3)についての代理権 | ||
制限を利用した場合の 資格などの制限 | ●医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の地位を失うなど | ●医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の 地位を失うなど |
※申し立てができる方
本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など
(注釈)
※1: | 民法13条1項に掲げられている借金。訴訟行為、相続の承諾や放棄、新築や増改築などの事項をいいます。ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為は除かれます。 |
※2: | 本人が特定の行為を行う際に、その内容が本人に不利益でないか検討して、問題が無い場合に同意(了承)する権限です。保佐人、補助人はこの同意がない本人の行為を取り消すことができます。 |
※3: | 民法13条1項に挙げられている同意を要する行為に限定されません。 |

03 成年後見人にはどのような方が選ばれるのか
家庭裁判所が最も適任だと思われる方を選任します。
申立の際に挙げられた候補者以外の方(弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士等)を選任して後見事務を行ってもらいます。
04 申立てはどこの家庭裁判所にすればよいか
本人の所在地を管轄する家庭裁判所にしてください。
管轄の家庭裁判所がわからない場合は最寄りの家庭裁判所におたずねください。
05 誰が、申立てをすることができるのか
申立てをすることができる方は、本人、配偶者、四親等内の親族(※5)などに限られています。
その他に市区町村長が申し立てることもできます。
※5 四親等内の親族とは、主に次の方たちです
●親、祖父母、子、孫、ひ孫
●兄弟姉妹、甥、姪
●おじ、おば、いとこ
●配偶者の親、子、兄弟姉妹
06 申立てに必要な書類や費用
申立てに必要な書類や費用のうち、主なものは次のとおりです。
●申立書(※6)
●診断書(成年後見用)(※6)
●申立手数料(1件につき800円分の収入印紙)(※7)
●登記手数料(2,600円分の収入印紙)(※8)
●郵便切手(※9)
●本人の戸籍謄本(※10) など
詳しくは、家庭裁判所に用意されている一覧表などでご確認ください。
07 鑑定について
本人の判断能力の程度を医学的に十分確認するため、医師による鑑定を行うことがあります。この場合は、鑑定料が必要になります。
鑑定料の額は個々の事案によって異なります。
鑑定が必要となる事案では、申立ての時に鑑定料をあらかじめ納めていただくことがあります。
申立てに必要な費用は、鑑定料を含め原則として申立人が負担します。
なお、経済的に余裕のない方については、日本司法支援センター(法テラス)による申立書作成費用及び鑑定料の立替えなど民事法律扶助の各種援助を利用できる場合があります。詳しくは法テラスコールセンター(0570-078374)へお電話ください。
08 法定後見開始の審判の申立てに必要な費用
後見 | 補佐 | 補助 | |
申立手数料(収入印紙) | 800円 | 800円(注5) | 800円(注6) |
登記手数料(登記印紙) | 4,000円 | 4,000円 | 4,000円 |
その他・・・連絡用の郵便切手(注7)、鑑定料(注8)
(注5) | 保佐人に代理権を付与する審判又は保佐人の同意を得ることを要する行為を追加する審判の申立てをするには、申立てごとに別途、収入印紙800円が必要になります。 |
(注6) | 補助開始の審判をするには、補助人に同意権又は代理権を付与する審判を同時にしなければなりませんが、これらの申立てそれぞれにつき収入印紙800円が必要になります。 |
(注7) | 申立てをされる家庭裁判所にご確認ください。 |
(注8) | 後見と補佐では、必要なときには、本人の判断能力の程度を医学的に十分確認するために、医師による鑑定を行いますので、鑑定料が必要になります。鑑定料は個々の事案によって異なりますが、ほとんどの場合、10万円以下となっています。 |
(注9) | 申立てをするには、戸籍謄本、登記事項証明書、診断書などの書類が必要です。これらを入手するための費用も別途かかります。(申立てに必要な書類については、申立てをされる家庭裁判所にご確認ください。) |
(注10) | 資力が乏しい方については、日本司法支援センター(愛称「法テラス」)が行う民事法律扶助による援助(申立代理人費用の立替えなど)を受けることができる場合があります。詳しくは法テラスの相談窓口(コールセンター0570-078374)へお電話ください。 また、法定後見制度を利用する際に必要な経費を助成している市町村もあります。詳しくは各市町村の窓口へお問い合わせください。 |
09 成年後見制度利用の申立てから利用までの期間

審理期間については、個々の事案により異なり、一概にはいえません。鑑定手続きや成年後見人等の候補者の適格性の調査、本人の陳述聴取などのために、一定の審理期間を要することになります。多くの場合、申立てから法定後見の開始までの期間は、4ヶ月以内となっています。
成年後見制度の申請・利用について詳しく知りたい方は、主治医やケースワーカーにお気軽にご相談ください。