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周辺症状(BPSD)について

認知症の主な症状は、中核症状周辺症状に大別されます。
中核症状は、脳の神経細胞の障害によって起こる認知機能障害です。
「新しいことが覚えられない」「日付や場所がわからない」「物事の段取りができない」などがあり、初期からほぼすべての人に認められます。
周辺症状は、中核症状と環境要因・身体要因・心理要因などの相互作用の結果として生じる様々な精神症状や行動障害を意味します。

認知症の主な症状

中核症状

脳の神経細胞の障害によって起こる認知機能障害
記憶障害 見当識障害 実行機能障害

周辺症状(BPSD)

中核症状+環境要因、身体要因、心理要因などの相互作用によって様々な精神症状や行動障害を意味する

BPSDはの略で、日本語訳では「認知症の行動・心理症状」と言います。
以前は「周辺症状」と言われることが多かったのですが、BPSDは中核症状にも増して、本人・家族の負担が大きく、まさに中核的な症状のため、現在では「周辺症状」とは使わず「行動・心理症状(BPSD)」と表しますので、以下BPSDとします。

01 中核症状・BPSDのモデル

*進行する認知症状は改善が困難ですが、周辺症状は適切なケアによって軽減できます。

02【BPSDの症状】

≪過活動状態のBPSD≫

・興奮・不穏・幻覚・妄想・物盗られ妄想・大声・性的逸脱行為・脱衣・焦燥・易怒性・攻撃性・帰宅要求・過干渉・らん集(収集)・ろう便(放便)・暴力・自殺念慮・昼夜逆転・徘徊・まとわりつき・異食・過食・夕暮れ症候群・常同行為

≪非活動状態のBPSD≫

・うつ状態・喪失感・不眠・意欲低下・拒食・摂食障害

03 BPSDの成り立ち

04 中核症状からBPSDが発症する過程

記憶障害によってBPSDが発症する過程

05見当識・実行機能障害からBPSDが発症する過程

06失語、失行、失認によってBPSDが発症する過程

失語言語理解力、言葉の減少、拒絶
失行衣服の着脱やボタンが掛けられない、物品の使用目的がわからない
失認感覚器系(視覚・聴覚)からの情報認識ができない

「目にした景色の意味が認識できず迷子になる」
「部屋を間違える」
「手に触れたものが何かがわからず使用しの異常行動

07BPSDがもたらす影響

●快刺激

笑顔を引き出しBPSDを軽減させ、それがさらに笑顔を生む良循環をもたらし、楽しい生活の中では脳が活性化される。

●不快刺激

不安やイライラでBPSDを悪化させ、それがさらにBPSDを生む悪循環をもたらし、不快の生活の中では脳が退化する。

08BPSDへの対応のポイント

【1】「身体状態」「環境」「周囲の対応の仕方」など、さまざまな要因よって生じるので、「症状の原因は何だろう〜?」と幅広く目配りするようにします。

【2】本人の自尊心を傷つけない対応を心がけます。

【3】介助者の心情や身体状況にも配慮します。

【4】BPSDは認知症の経過中、一時期に生じることを説明します。
※一生ずっと続くものではありません

09BPSDの悪化因子とその対策

個人BPSD悪化要因
状況がわからないことの不安、自分の能力が徐々に失われていく自己喪失感など
対 応
安心を与える説明と、受容し支えるケアと、日課・役割のある生活
医療BPSD悪化要因
BPSDを悪化させることがある薬剤(ドネペジル、アマンタジン・睡眠薬、安定剤など)
対 応
生活状況を介護者から聞き取り、必要に応じた減量・中止

BPSD悪化要因
薬剤や拘束、脱水、便秘、疼痛、発熱などによるせん妄の併発
対 応
せん妄の原因となる病態の排除や薬剤の中止

BPSD悪化要因
尊厳を損ねる不適切なケアや無視、放置
対 応
パーソンセンタードケア(その人らしい生活を支える介護)の導入や介護者の教育

BPSD悪化要因
入院、施設入所、ショートステイ利用などのリロケーションダメージ移り住みの害)
対 応
仲良しや居場所作り、なじみの家具、調度品の持ち込み

BPSD悪化要因
トイレへの経路、ベッドの場所、室内の飾り物、雑音などの環境
対 応
なじみの環境に近づけ、静かに眠れるように調整
リハBPSD悪化要因
日課や役割、生きがいのない生活、孤独な生活
対 応
会話を増やしできる仕事を手伝ってもらう。習慣づけて日課にし、褒めたりやる気を引き出したりして脳の活性化へ

■参考文献

  1. 山口晴保編:認知症の正しい理解と包括的医療・ケアのポイント
  2. 服部英幸編:BPSD初期対応ガイドライン−介護施設、一般病院での認知対応に明日から役立つ
  3. 大塚恒子・末安民子・仲野栄編、日本精神科看護協会監:精神科ナースのための認知症看護
  4. 精神看護出版:精神科看護 2016.5月号
  5. 清水裕子編:コミュニケーションからはじまる認知症ケアブック第2版
  6. 宮永和夫著:事例で学ぶ痴呆老人の行動障害へのアプローチ