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統合失調症の治療とは?

01 統合失調症の治療とは?

薬物療法・精神療法・心理療法(認知行動療法等)・生活療法(作業療法 デイケア修正型電気けいれん療法などがあります。
ここでは、薬物療法について説明していきます。

薬物療法について

現在は、第2世代とよばれる比較的新しい抗精神病薬が使われています。因みに第1世代抗精神病薬は1950年代から使用されており、代表的なものはフェノチアジン系(コントミン・レボ・トミン等)ブチロフェノン系(ハロペリドール)等であり、現在も使用されていますが、副作用の関係で以前程の使用量ではありません。

統合失調症の薬物治療


 ほとんどの抗精神病薬が上記のようにドーパミン2受容体(D2受容体)に作用して過剰に分泌している
 ドーパミンの作用をブロックする薬理作用を持っています。

第2世代抗精神病薬について

1996年にリスペリドンが発売となり、以後11種類の第2世代抗精神病薬が発売されております。
10種類は作用機序(薬剤がどのような作用で効果を現すか)によって3つに分類されます。
(以下の薬剤名は当院採用薬剤名)

【1】SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)

該当薬剤リスペリドン・インヴェガ・ロナセン・ラツーダ
作用機序ドーパミン受容体に作用して幻覚妄想を抑える。セロトニン受容体に作用して副作用を抑える
メリット幻覚・妄想を抑える力がある
デメリット第1世代より少ないが、錐体外路症状・高プロやクチン血症が出現

【2】MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)

該当薬剤オランザピン・クエチアピン・シクレスト・クロザリル
作用機序多くの受容体に作用してそれに応じた効果を発揮するが、その分副作用も多い
メリット幻覚妄想を抑えて、鎮静する作用もみられる。興奮している症例に有用。
クロザリルは作用が強力で、治療抵抗性統合失調症(十分な薬剤治療を行っても効果がでないOR副作用が多く薬剤が使えない統合失調症)に使用される
デメリット代謝系の副作用(血糖の上昇・肥満)がでやすい
眠気もでやすいオランザピン・クエチアピンは糖尿病の人には使えない。

【3】DPA・DSS(ドーパミン部分作動薬)

該当薬剤エビリファイ・レキサルティ
作用機序ドーパミン受容体を(部分的に)抑えてドーパミン量を少なくする方向に働くが、ドーパミンが足らない部分では増やす機序が働き、ドーパミン量を調整する
メリット他の2種に比べて副作用が少ない
ドーパミンを上げる作用にて抗うつ作用がある
デメリット副作用は少ないがアカシジアがでる場合がある
鎮静作用が弱く、興奮等には効かない

※抗精神病薬の中でラツーダ・オランザピン・クエチアピン・エビリファイはそれぞれに抗うつ作用と抗躁作用を持ち、『感情安定薬』としても位置づけられており、うつ病や双極性障害にも効果がある

第2世代抗精神病薬の剤型による使い分け

統合失調症の治療

抗精神病薬や剤型によって、様々な使い分けがあり、それをする事により錠剤の服用より効果が期待できます

1)内用液

使い切りの小袋に入った液状の薬を服用する
水なしで服用ができて、速効性も高いですので、頓服として使用される事も多いです

該当薬剤:リスパダール・エビリファイ

2)注射剤

2~4週間に1回は注射する服用する煩わしさがなくなり、薬剤の血中濃度が一定化して症状が安定するメリットがあります。デメリットとしては、注射剤なので痛みを感じたり注射した部位が固くなったりする事があります。部位が固くなる副反応には、皮膚を柔らかくする軟膏類で対応可能です。


該当薬剤
リスパダールコンスタ(リスペリドン注射剤2週に1回)
ゼプリオン(インヴェガの注射剤4週に1回、12週に1回の2タイプあり)
エビリファイ(4週に1回)

3)テープ剤

皮膚に1日1回貼付する。服薬の煩わしさはなく、皮膚吸収であり消化管を通らない分それに対する影響が少なく、消化器系疾患を持っている場合などにも効果を発揮します。
デメリットとしては、皮膚の赤みやかゆみが出る事はありあすが、保湿剤やステロイド剤でカバーできます。

該当薬剤:ロナセンテープ1枚、ブロナンセリン12mgに相当します。大きさはスライスチーズ程です
2枚貼る事も可能であり、保険適応になっています

抗精神病薬剤の副作用

抗精神病薬剤の副作用



・錐体外路症状は、抗精神病薬剤では最もよくみられる副作用です。

アカシジア
ずっと歩き回ったり、足を組んだりはずしたりして落ち着かず動き回っている状態
不安感・焦燥感などの精神症状を伴う

ジストニア
筋肉の異常な緊張(収縮)状態
頸部・体幹・四肢に(ゆっくり一定方向に)ねじれるような動きが生じ奇妙な姿勢をとり続ける
眼球上転(目がつりあがる)・目が回転または固定する等の眼球異常も呈する

ジスキネジア
口をもぐもぐさせる。舌下左右に揺らす。手足が勝手に動く等の不自然で不規則な動きです。
ジストニアとの違いは、ジストニアのようにゆっくりとして固定する動きではなく、常に身体の器官が動き続けます。
抗精神病薬を長時間服用すると、脳の機能が変化してジスキネジアを発症することがあり、これを「遅発性ジスキネジア」と呼びます。

薬剤性パーキンソニズム
抗精神病薬剤のドーパミンを抑える作用により脳内のドーパミンとアセチルコリンのバランスが崩れて起きる、パーキンソン病症状を生じる場合があります。

以下のような症状を呈します。
1)振戦:両手・上下肢のふるえ・手の振戦が多い
2)筋強剛:両上肢の動きづらくなり、固い感じで柔軟性がなくなる
3)歩行障害:歩幅が狭くなる・一歩目が出づらい・止まれず前のめりに突進してしまう


中枢神経系症状
眠気や倦怠感を生じる事があり、複雑で危険を伴う作業や運転には注意が必要です

糖代謝異常
高血糖や糖尿病の発症に注意が必要です
糖尿病を併発している場合は、クエチアピンとオランザピンは使用できません。

遅発性ジスキネジア
抗精神病薬剤の長期使用時におこるドーパミン受容体異常によっておこる
絶えず口をもぐもぐさせたり、舌を出したり戻したりを繰り返す。体幹や下肢にも同じ症状が出る事がある。

悪性症候群
発生機序はあきらかでありませんが、脳内ドーパミン濃度の急激な上昇が原因といわれています。
薬剤の開始時や増量時や変更時等の起こりやすく、抗精神病薬剤だけでなく抗うつ薬・抗パーキンソン病薬等の他の神経系薬剤も原因となります。
発熱・意識障害・筋強剛(手足が固くなる)発汗・嚥下障害・脱水・頻脈等の多くの重い徴候を呈します。
頻度はかなり低く、まれな副作用でありますが、注意は必要です。
治療は、原因薬剤の中止・補液・体温冷却などの対症療法に加えてダントリウムという筋弛緩薬を投与して行います。

離脱症候群
薬剤の(急な)中断時に起こる症状です。一般的には禁断症状と表現した方がわかりやすいでしょう。これも抗精神病薬剤だけでなく、抗うつ剤・抗不安薬・抗パーキンソン病薬等の神経系統薬剤全般にみられます。薬剤がぬける事への身体の抵抗と考えて下さい。

身体症状:吐き気・下痢・頭痛・発汗・筋肉痛
精神神経症状:不安・焦燥感(いらいら感)・不眠・錐体外路症状(アカシジア ジスキネジア)・精神病状態(幻覚・妄想)

※副作用が出た場合の対処法
まず主治医と相談して、原因となる薬剤の減量・中止・薬剤の変更等をしてもらう事が必要です。
但し、現在の精神症状が良好であり減量や薬剤変更により悪化が予測される場合は副作用を抑える薬剤投与をする事もあ

ります。

例えば、令和4年6月に遅発性ジスキネジアの治療薬・ジスバルが発売されました。
抗精神病薬の長期投与中でジスキネジアが重症化しているケースへの効果が期待されています。

治療抵抗性統合失調症の治療について

治療抵抗性統合失調症とは、『2種類の抗精神病薬を十分量(コントミン600mg換算)使用しても改善しない統合失調症と抗精神病薬に対する副作用が多く治療不能な統合失調症』と定義されていますが、個人的には上記に加えて、薬物療法としては注射剤治療にも反応がなく、修正型電気けいれん療法にも一過性の良化はあるが長続きはしない為に、入退院を繰り返しているような症例のイメージです。

この治療には、MART系統の抗精神病薬であるクロザリルが使用されます。ガイドラインでは、クロザリ修正型電気けいれん療法の併用が推奨されています。

再発について

再発は患者様も医療サイドも防ぎたいと考えています。

再発について



上記のようなデータもあり、きちんとした生活リズムと服薬は再発予防となります。
また、悩みができたり症状悪化の兆しがあった時に相談できる人を作っておくことも必要です。